本記事では、三次方程式の解と係数の関係及びその応用問題について説明します。
三次方程式の解と係数の関係
xについての三次方程式
ax3+bx2+cx+d=0...(1)
(但しa≠0)
の三つの解をそれぞれα,β,γとすると、方程式(1)の左辺は以下のように因数分解されます。
ax3+bx2+cx+d=a(x-α)(x-β)(x-γ)...(2)
式(2)の右辺を展開すると以下のようになります。
a(x-α)(x-β)(x-γ)=ax3-a(α+β+γ)x2+a(αβ+βγ+γα)x-aαβγ...(3)
式(3)の右辺は式(2)の左辺に等しいので、各係数を比較すると以下のような等式が成立します。
- b=-a(α+β+γ)...(4)
- c=a(αβ+βγ+γα)...(5)
- d=-aαβγ...(6)
式(4)乃至式(6)の両辺をaで割ると、三次方程式(1)の解と係数の関係が導かれます。
- α+β+γ=-b/a...(7)
- αβ+βγ+γα=c/a...(8)
- αβγ=-d/a...(9)
応用問題
三次方程式(1)の三つの解であるα,β,γの対称式*1の値を三次方程式(1)の各係数a,b,c,dで表す問題を考えます。
例1:α2+β2+γ2
(α+β+γ)2を展開すると
(α+β+γ)2=α2+β2+γ2+2(αβ+βγ+γα)...(10)
となり、式(10)をα2+β2+γ2について整理すると
α2+β2+γ2=(α+β+γ)2-2(αβ+βγ+γα)...(11)
となります。
式(11)の右辺に式(7)乃至式(9)を代入すると以下のようになります。
α2+β2+γ2=(-b/a)2-2×(c/a)=(b2-2ac)/a2
例2:α3+β3+γ3
α3+β3+γ3-3αβγを因数分解すると
α3+β3+γ3-3αβγ=(α+β+γ)(α2+β2+γ2-αβ-βγ-γα)...(12)
となります。
式(12)の右辺に式(7)乃至式(9)及び例1の結果を代入すると以下のようになります。
α3+β3+γ3-3αβγ=(-b/a){(b2-2ac)/a2-(c/a)}
=(-b/a){(b2-3ac)/a2}
=(3abc-b3)/a3...(13)
3αβγにも式(9)の関係を適用すると、最終的には以下のようになります。
α3+β3+γ3=(3abc-b3-3a2d)/a3
例3:(k-α)(k-β)(k-γ)
式(2)の両辺をaで割ると以下のようになります。
(ax3+bx2+cx+d)/a=(x-α)(x-β)(x-γ)...(14)
式(14)の右辺にx=kを代入すれば、あっさりと求まります。
(k-α)(k-β)(k-γ)=(ak3+bk2+ck+d)/a
例4:1/α+1/β+1/γ
1/α+1/β+1/γを通分すると
1/α+1/β+1/γ=(αβ+βγ+γα)/αβγ...(15)
となります。
あとは式(15)に式(8)及び式(9)を代入すれば即"勝負あり"です。
1/α+1/β+1/γ=-c/d
例5:(α+β)(β+γ)(γ+α)
式(7)より、
-
α+β=α+β+γ-γ=-b/a-γ...(16)
-
β+γ=α+β+γ-α=-b/a-α...(17)
-
γ+α=α+β+γ-β=-b/a-β...(18)
が成立するので、
(α+β)(β+γ)(γ+α)=(-b/a-α)(-b/a-β)(-b/a-γ)...(19)
となります。
すると例3におけるk=-b/aの場合になるので、最終的には以下のようになります。
(α+β)(β+γ)(γ+α)=(ad-bc)/a2
本記事は以上です。
*1:二つの文字を入れ替えても等しくなる式。例えばx+yやxy,x+y+z,xy+yz+zx,xyz